岬の思い出

懐かしい曲に出合いました。曲が始まるとまもなく、鼻の奥がツンと痛く感じられ、静かに涙がこぼれました。

 

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やわらかい下草の生えた岬を、ふたりの子供が村の方へと笑いながら駆けていきます。
やがてに村へと続く道に着いたとき、そこで待っていたのは黒塗りの自動車。

先に駆けおりた男の子は、自動車から降り立った恰幅の良い紳士に抱き上げられ、そのまま自動車の中の人になりました。
また逢おうね! また来るよ! 窓から身を乗り出して、叫ぶ少年。

その様子を声も出せずに、ただ見ている少年・・・

自動車が遠ざかった後、彼が被っていた帽子を取ると金色の柔らかな髪が流れるようにこぼれ落ちました。

娘はとても働き者でした。たくさんの妹や弟がいましたが、彼らの面倒もよく見ました。病気がちの母親を助け、寝る間も惜しんで勉強もしました。そんな彼女を、村の人たちみんなが愛していました。

そんなある日、黒塗りの自動車がやってきました。
降りてきたのは、ブラウンの髪の笑顔がとても素敵な青年でした。彼は、誰に聞かずとも娘がいる場所を知っていました。

下草が生えている岬の突端・・・

逢いに来たよ

振り返った娘の頬には、キラキラと輝く涙がありました。

本当に来たのね もう逢えないと思っていたわ

そういう娘に青年は優しくキスをしました。
数日後には花嫁となっていた娘を、村の人はとても喜びました。そして、ふたりは青年の住む街へと帰っていきました。

村にやってくる彼らは、いつも岬の突端で海を見つめていました。
ふたりが3人になり、4人になり・・・

いつも穏やかな笑顔を絶やさず、いつも愛おしそうにお互いを見つめていました。

時が流れ、夫が亡くなりました。

ひとり 岬の突端に立ち、しばらく海を眺めていた妻は手に持っていた白い薔薇を海に捧げました。

もう来ないのだろうか・・・

村の人たちが噂しました。
思い出が多すぎるから・・・
そんな風に言う人もいました。

次にやってきたのは、車椅子に乗り金色の髪が美しい白髪になった姿でした。

夫婦となって幸せの絶頂だったときと同じ年頃の娘が車椅子を押し、それを助けるように年配の女性がそばに寄り添っていました。

何も言わず、じっと海を見ていました。

 

数年後、白い薔薇はまた海に捧げられました。

 

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若いころから好きだったこの曲。

まるでイタリアの映画のような美しいドラマのなか、BGMとして、ずっと流れていました。
ある時代の物語。

これも過去生のひとつです。

辛い過去生はもう終わり、これからは幸せだった過去生が蘇るようです。

 

ありがとうございます。